第3回 木頭クマ祭りを開催しました!

2025.03.24



2025年3月23日に、クマの主要な生息地である徳島県那賀町木頭地区にて、「第3回木頭クマ祭り」を開催しました。
木頭クマ祭りは、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催する、四国自然史科学研究センター、那賀町木頭図書館、日本自然保護協会、日本クマネットワークの共催による普及啓発イベントです。


「熊祭り」と聞くと、アイヌやマタギの儀式・行事が頭に浮かぶ方も多いことと思います。うって変わって、木頭クマ祭りは、四国のツキノワグマの生息地である徳島県那賀町木頭地区で最近始まった新たな取り組みです。
四国のツキノワグマの生息地域で、ツキノワグマの保全という新たなテーマを通じた地域連携の取り組みとして、2022年から毎年開催しています。

活動に関わる様々な立場の人々を一堂に集めたイベントを開催し、
①プロジェクトの進捗を報告し、四国のクマに対する社会的関心を高めること、
②地域内外の関係者間の交流と連携を深め、山間地域の新たな価値を提案すること
を狙いとしています。


年を重ねるごとに関わる方が増え、ツキノワグマだけでなく、那賀町や剣山系の地域文化や産業も含めた地域の恒例イベントとして定着しつつあると感じています。
当日は春らしい暖かな天気にも恵まれ、350名以上の方に来場いただきました。





たのしいブースとおいしいブース

屋外のスペースを中心に、「たのしいブース」(体験出店)、「おいしいブース」(飲食出展)として、計16の団体が出店しました。
これは、昨年度の14店舗を上回る出店数となり、イベントの広がりを感じる結果となりました。


「たのしいブース」では、木工製品づくりの体験や、木頭の文化を紹介するブースなどが集まり、ここでしか学べない内容を一挙に紹介する機会になったかと思います。
子どもから大人まで多くの来場者が、楽しみながら地域の魅力に触れる姿が印象的でした。


「おいしいブース」では、木頭特産の柚子やアメゴを使った料理、さらには剣山系の山の施設で提供されているメニューなど、地域ならではの美味しい食が勢揃いしました。
今回は、初めてクラフトビールの出店もあり、訪れた方々に好評をいただきました。


また、那賀町木頭地区の集落活動支援員・川人さんのご協力のもと、「出展団体リレートーク」を開催しました。
出店者の皆さまに、日頃の活動や出店への想いを語っていただき、参加者同士の理解とつながりを深めました。

出展者一覧


出張おもちゃ美術館

 

WoodHeadの木頭杉製しおり

 

山の家特製カレーや神山すだち鶏天うどんには長蛇の列

 

地元の名物が勢ぞろい

地元住民によって結成されたバンド「OMG楽団」が会場を賑やかに盛り上げました。



まなブース

「まなブース」(展示・情報発信)では、当センターを含む、四国のクマの保全活動に主体的に取り組む9団体がポスター展示を行ったり、那賀町の自然とくらしをテーマにした写真展などが行われました。

ポスター展示では、小学生によるふるさと学習や夏休みの自由研究、徳島大学の卒業研究の発表など、幅広い世代による学びの成果が紹介され、プロジェクトの取り組みが教育の現場にも広がっていることを実感しました。

当センターからは、四国のクマの生態や保全活動に関する展示のほか、カメラトラップ調査や捕獲調査の様子を再現し、普段我々が実施する調査活動を紹介しました。

 

ツキノワグマ生態調査の道具を大公開

 

調査体験ブースで捕獲調査の説明


「屋mの写真展」地域の写真家4名の作品を展示

 

ポスター展示


パネルトーク

「しこくまワークショップ、やります!-みんなでつくろう人とクマのこれから-」


パネルトークの登壇者たち


午後には、パネルトークを開催しました。
今年度は、国際自然保護連合(IUCN)の野生生物保全計画専門家グループ(CPSG)の支援を受けて、四国のツキノワグマの保全計画づくりワークショップを開催予定です。
当プロジェクトではこれを「しこくまワークショップ」と名付け、現在その準備を進めています。
今回のパネルトークでは、その内容を皆さんに広く紹介しました。


木頭学園生徒によるふるさと学習発表


パネルトークの冒頭では、ポスター展示も行った木頭学園の3・4年生が、1年間取り組んできたツキノワグマに関するふるさと学習の成果を発表しました。
「被害が心配なので増えてほしくない」と話す生徒がいながらも、「絶滅してほしくない」という点では生徒の思いが一致していました。
また、地域内でも保護に賛成・反対の声があることも紹介され、クマの保護を多角的に考える大切さを問いかけてくれました。

続いて、当センターの山田と安藤より、四国のクマの現状や保全計画の必要性を説明しました。



さらに、CPSG日本支部(CPSG-Japan)から米田氏と冨澤氏に登壇いただき、CPSG方式のワークショップの特徴や他地域での実例、期待される成果などをご紹介いただきました。

終盤の質疑応答では、「シカによる森林被害対策も議論に加えてほしい」「被害が出た場合の補償は?」「保全をしないという選択肢もあるのか?」「ライオンやチーターの海外事例はどうか?」など、幅広い意見が寄せられました。
また、環境省四国事務所の大林所長からは、ツシマヤマネコの保全計画に関わった経験をふまえた助言をいただきました。
日本生命の岩本氏からは、企業としての生物多様性保全への貢献(ネイチャーポジティブ)の一環として、今後も本地域の活動に協力する意向が力強く語られました。





木頭クマ祭りは、まだまだ歴史が浅いイベントですが、那賀町や剣山系で活動するさまざまな方々が手を取り合い、「四国のツキノワグマ」というテーマを通して地域の活性化につなげる取り組みに手応えを感じています。

来年3月21日(土)には第4回木頭クマ祭りを開催予定です。
その時には、しこくまワークショップの結果をお知らせします。
ぜひ、遠く遥々、那賀町木頭までお越しください!

運営スタッフ一同

 

🔗 しこくまワークショップの詳細はこちらから
🎥 パネルトークは当センターYouTubeチャンネルにてアーカイブ配信しています