プロジェクトについて
Save the Island Bearプロジェクトは、絶滅が危惧される四国地域のツキノワグマの保全を推進するために、四国自然史科学研究センター、日本自然保護協会、日本クマネットワークの3者が協働で実施するボトムアップ型の保全プロジェクトです。
四国はツキノワグマが生息する世界で最も小さい島です。当プロジェクトでは、この四国に暮らす世界的に貴重なツキノワグマをIsland Bear(島熊)と名付け、保護施策を推進するうえでの基礎情報となる調査研究や、軋轢の予防、地域への普及啓発、ツキノワグマの価値の創出などの活動に取り組んでいます。これらの活動から、関係行政機関によるより積極的な保護策の実行に繋げることを目標とします。また、地域社会が主体となる保全活動を目指し、地域の多様なセクターとの連携を重視しています。
背景・目的
近年、人とツキノワグマの軋轢が頻繁に報道されるようになる一方で、九州では2012年に絶滅が認められ、四国では絶滅の瀬戸際に置かれています。四国のツキノワグマは推定生息頭数わずか20頭程度、2036年の絶滅確率は近交弱勢があった場合62%と存続可能性が極めて低い状態にあります。全国的にも国内で唯一ツキノワグマの分布拡大が確認されない地域とされ、環境省のレッドデータブックでは、「絶滅のおそれのある地域個体群」として記載されています。これまで30年以上にわたり四国全域では捕獲禁止の保護施策が続けられててきましたが、生息数回復の兆しは未だ見えていません。生物多様性保全や世界の持続可能性の重要性に対する認識が高まるなか、九州に続きさらに四国のツキノワグマまで絶滅させるようなことになれば、世界的な誠に遺憾な事態となります。
ツキノワグマは豊かな自然の象徴と言われる一方で、人身被害や農林業漁業被害などの一面を併せ持つ野生動物でもあります。そのため、四国のツキノワグマの保全を巡っては、グローバルな環境目標である将来にわたる生物多様性の保全と、ローカルかつ根本的な行政目標である地域住民の安心安全な暮らしを守るという、2つのスケールが異なる目標の達成が求められます。こうした複雑化した課題の解決に向けて、より積極的な保護策を実行するための体制を整備すると同時に、生息地域付近に暮らす住民だけに負担を強いることがない仕組みを醸成し、ツキノワグマの生息に対する地域の寛容性を高めていく必要があります。生物多様性保全や森林保全を担う関係機関や地域の利害関係者、そして研究機関やNGO等の様々な関係者の連携による広域連携保護プロジェクトを立ち上げ、速やかにアクションを起こさなければ絶滅が回避できない状況に来ています。
九州での絶滅や四国での危機的状況は、現在に至るまでどのようにして我々が森林を利用し、そこに暮らす野生生物と向き合ってきたのかを表しているのではないでしょうか。四国のツキノワグマの絶滅を回避し、ツキノワグマと共生する未来を選ぶことができるかは、今を生きる我々の世代の決断と行動に委ねられています。
実施地域
当プロジェクトは、四国でツキノワグマが生息する剣山系とその周辺地域を対象に活動を実施しています。
運営団体
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四国の自然環境を次世代に繋ぐ活動
四国の優れた自然環境を次世代に引き継ぎ、また、社会的・文化的基盤の発展に寄与するために、2003年に創立されたNPO法人です。設立以来、活動の柱の一つとして、絶滅の危機にあるツキノワグマ四国地域個体群の保全のための調査研究に取り組んできました。自然史科学の研究者ならびに自然環境の現状と未来に関心を寄せる多くの方々の協力のもと、希少生物の基礎調査・研究を行い、野生生物を中心とする地域生態系の保全と環境の復元につとめています。また、調査・研究に基づく政策提言型のシンクタンクを目指すとともに、自然史科学の後継者を育成することを目的として自然観察会や講座などを行っています。
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日本で最も歴史の古い自然保護のNGO
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。会員2万4千人。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
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人間とクマの共存を考えるNGO
日本クマネットワーク(JBN)は、日本における人間とクマ類との共存をはかるために作られたNGOです。クマに関する情報の共有、クマの保護や被害防止などに関する問題提起、地域の活動支援などを行っています。これまでに、国際クマ会議の日本開催、アジアのクマの現状と保全に関する調査、人里に出没するクマ対策に関する普及啓発と地域支援事業、九州のツキノワグマの絶滅に関する現地調査や全国のクマ類の分布実態調査、クマ類による人身事故防止のための調査など、人とクマに関わる様々な調査や活動などに取り組んできました。クマの研究者のみならず、自然保護活動家や国や地方の行政関係者、学生や主婦の方など、クマに興味のある様々な方が参加しています。
プロジェクト運営・問い合わせ先
四国自然史科学研究センター