クマとの共生のために

ツキノワグマによる被害と予防

四国ではニホンミツバチを利用した伝統的養蜂が盛んに行われています。ハチミツの蜜源は自然林に豊富にあるため、自然林が多く残る地域では林道の奥まで養蜂用の巣箱が設置されます。野生下でもハチ類の巣を襲って食べるツキノワグマにとって、蜂蜜を沢山蓄えた巣箱はご馳走です。そのような地域ではツキノワグマに巣箱を壊され中身を食べられてしまう養蜂被害が発生することがあり、地域の養蜂者との間に軋轢が生じます。

巣箱を簡単に食べれる食物であることを学習して執着行動を示す個体に対しては、被害防除がより一層難しくなります。また、巣箱を探して人里まで近づいてしまう個体が出てしまう可能性も考えられます。当プロジェクトでは養蜂被害を早期に防ぐために養蜂者に電気柵を無償貸与し、被害防止のノウハウを地域に普及しています。地域の伝統的養蜂を妨げることなく、地域とツキノワグマのよりよい関係を築くことを目指しています。

なお、ツキノワグマに食べられることなく採取できたハチミツは、「ツキノワグマと共生するハチミツ」として地域のお土産屋等で販売し、利益の一部をプロジェクトの運営に活用しています。

クマとのトラブルを回避するために

 これまで四国で学術捕獲した個体の追跡調査から、四国では人里を避けて山奥でひっそりと生活していることが分かっています。通常、ツキノワグマは人を獲物として襲う動物ではありません。状況によって人に危害を与えることもありますが、森の中では人間よりもツキノワグマが先に人の存在に気付きその場を離れることが多いです。

 ツキノワグマが生息する地域では、クマに対する正しい知識を持ち、出会わない・近づかせないための工夫をする事が大切です。

まずは出会わないための工夫が大切

人里付近では

ツキノワグマは行動範囲が広いため、人間の活動する地域まで来てしまう可能性があります。しかし、その時にツキノワグマを寄せ付ける誘引物(放棄果樹、放置作物、生ごみ、動物の残滓、蜜胴など)が無ければ、その場に居続ける危険性は低くなります。人とクマの適切な距離を維持するためには、集落近くにある誘引物を極力減らし、人間由来の食物に執着する「問題グマ」を作らないことが重要となります。養蜂用の巣箱を設置する際には電気柵を活用することも有効です。

山で活動するときは

クマの方に先に自分の存在に気付いてもらうために、クマ鈴など音の鳴るものを携帯しましょう。もしくは、見通しの悪い藪や林道のカーブなどでは声を出す、手を叩くなどして音をたてましょう。また、残飯などのごみは山残さずに持ち帰りましょう。

もしもクマに出会ってしまったら・・・・

もしも出会ってしまったら、クマを刺激しないように、とにかく落ち着いて冷静に行動することが重要です。

距離が離れている場合

ゆっくりとその場を立ち去る。

距離が近い場合

慌てて走ったり大声を出してクマを興奮させないようにしましょう。クマから目を離さずに、背を向けずにゆっくりと後退してください。

向かってきたら(威嚇突進)

多くの場合は、突進の途中で止まり後退するか、目前でUターンをして逃げていきます。落ち着いて、クマとの間に障害物が来るようにゆっくりと後退しましょう。

突進してきたら(攻撃突進)

市販のクマ撃退用スプレーも有効射程距離にいる場合は有効です。それでも攻撃を受けた時は、うつ伏せになり急所となる首の後ろを両手でガードするなどして防御姿勢をとるようにしてください。