ツキノワグマの生態
■外形的特徴
黒色の体毛と丸く比較的大きな耳を持つ中型のクマです。胸には三日月に似たV字模様の白い毛があります。この「ツキノワ模様」を持つことがツキノワグマの名前の由来とされています。英語ではMoon Bear(ムーンベア:月熊)とも呼ばれます。ツキノワ模様の形状は個体ごとに異なるため、この斑紋の個体差を利用して個体を識別することも可能です。
また、ツキノワグマは樹上生活に適応した短く丈夫な爪を持っています。後肢に比べて前足の筋肉がよく発達しており木登りを得意とします。
■大きさ(四国で確認された個体の計測値を基に紹介します)
頭胴長 オス平均140cm、メス平均120cm (鼻先から尻尾の根元までの長さ)
体高 50~60cm
体重 オス平均約60kg、メス平均約45kg
ただし、個体や季節による変化が大きく、過去には体重100kg近いオス個体(7月に捕獲)も確認されています。オスの方がメスよりも大きい性的二型を示します。
■ツキノワグマの一年と食べ物
ツキノワグマは植物を主食とした雑食性の動物です。季節や生息地域の環境によって柔軟に食べ物を変えて生活しています。基本的な食性は、春には色々な植物の新芽、若葉、花など、夏にはイチゴの仲間やサクラ類の果実、ハチやアリ等の社会性昆虫、秋にはブナやミズナラのドングリやミズキやヤマブドウなどの様々な果実をひたすら食べて、冬眠に備えてエネルギーを蓄えます。いわゆる「狩り」をして獲物を捕らえることは不得意ですが、シカなどの死体を見つけた時にはこれからも食べます。
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■寿命
野生下では20歳を超える個体は稀です。
四国の野生個体では、最高で推定年齢24歳のオス個体が確認されています(2021年時点)。
栄養条件がよい動物園などの飼育個体では30歳を超える個体もいます。
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■繁殖と出産
雌雄ともに4歳ごろから生成熟に達して繁殖が可能になります。6~8月にかけて交尾期を迎え、気の合うオスとメスが出会うとしばらく行動を共にします。メスは数年おきに1~2頭の子供を出産します。若いメスは子育てに失敗することが多く、また子どもの時期の死亡率は特に高いと言われています。シカやイノシシとは異なり、自然下での増加率は低い動物です。
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■行動範囲
オスで100~200㎢、メスで50~100㎢程度の範囲を移動しながら生活します。この広い範囲を均等に利用するわけではなく、集中して利用する場所が広範囲にいくつも存在します。
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■冬眠
森林に食べ物が少なくなる11~12頃からは木の洞や岩穴、土穴などで寝て過ごします。そして翌年の3~4月頃に冬眠から覚めて活動を再開します。
メスは冬眠期間中に出産し、冬眠穴の中で飲まず食わずの状態で子育てを行います。